大判例

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広島高等裁判所 昭和41年(う)54号 判決

判決理由〔抄録〕

所論は、被告人運転の自動三輪車はカーブ頂点から約三二米手前で先行乗用自動車の追い越しを完了しているのであり、そしてこの地点からは相当前方まで見透しがきくのであるから、本件追い越しをしたことについて被告人に過失はない、本件事故の原因は、折柄対向して来た被害者道中光顕運転の原動機付自転車が、先行の小型貨物自動車に相当の間隔をおいて道路左側を追随進行しておれば事故は生じなかったのに、前方を注視せず、至近距離で先行自動車に追随し、更に右先行車を追い越そうとして道路の右側に出たことによるものであると主張するけれども、原判決が引用した被告人の司法警察員に対する昭和四〇年三月一九日付、同月二五日付各供述調書、原審における証人岡房枝、同中林行雄に対する各証人尋問調書、司法巡査作成の実況見分調書、医師小野博久作成の死体検案書、並びに当審における検証調書および証人古谷淳一郎に対する証人尋問調書の各記載を綜合すれば、被告人は道路前方が右にカーブしているため見透しのきく範囲が僅かに一〇〇米余に過ぎない地点において、先行自動車を追い越そうとはかり道路中央線より右側部分を毎時五〇粁位の速度で進行したため、自己運転の自動三輪車の運転台が先行自動車の先端の前に出た頃は前方の見透しのきく範囲は約七五米に過ぎない状況であって、先行自動車の前方に出たのち未だ道路の左側部分に戻り得ない前に、折柄反対方向から進行して来た小型貨物自動車と出会い同自動車とは辛うじてすれ違い得たが、その際右小型貨物自動車の背後から被害者道中光顕の運転する原動機付自転車が道路中央線上に進出し対向して来るのを約一〇米前方に発見し、急遽制動の措置をとると同時にハンドルを左に切って避けようとしたがおよばず、自車前部右側を右道中の運転する自転車に激突させて同人を路上にはね飛ばし、よって同人をして頭蓋底骨折により即死させたものであることが認められるのであって、本件事故の原因は、原動機付自転車を運転対向して来た被害者道中が先行の小型貨物自動車の右側中央線上に進出して来たことにもよるけれどももともと自動三輪車を運転する被告人としては、曲り角附近において妄りに道路の中央より右側部分に出で他の自動車を追い越す等のことを避け、もって対向自動車との接触事故を防止すべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り、曲り角の手前一〇〇米余の前方の見透しのきく範囲の狭い地点において先行の乗用自動車の追い越しにかかり道路中央線より右側部分に進出し無理な追い越しをしたため、約一〇米先を対面進行して来る被害者道中運転の自転車を発見した際は未だ道路左側部分に復しておらず、急遽制動の措置をとると同時にハンドルを左に切って避けようとしたが間に合わなかったものであるから、被告人は業務上必要な注意を怠って道中光顕を死に致したものというべく、従って原判決が被告人に対する業務上過失致死の事実を認定したのは当然であって、論旨は理由がない。

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